更年期によくある病気

更年期障害

更年期障害

性成熟期の女性は、卵巣から十分な女性ホルモン(エストロゲン)が分泌され、そのホルモンのおかげでみずみずしく心身ともに健康な体を保っています。それが40歳代後半の更年期になると、この卵巣の機能が次第に低下してエストロゲンの分泌が減少し、50歳前後にとうとう機能が廃絶して閉経を迎えます。この更年期の急激なエストロゲンの減少は自律神経の失調をきたし、さまざま不定愁訴を引き起こします。これが更年期障害といわれるものです。さて、どんな症状か代表的なものを以下に挙げてみます。

■急に顔がほてり、汗が吹き出てくる。
■上半身は熱いのに、手足が冷える。逆に、手足がほてって布団から足を出したくなる。
■肩こり、頭痛がする。腰痛や関節痛がでてくる。手足のしびれが出てくる。
■めまい、ふらつきがある。ふわふわして雲の上を歩いている感じ。
■動悸、息切れがあり、仕事や何かに夢中になっているときは忘れているが、ほっとした時間や、
布団に入って眠りにつこうとすると、動悸が襲ってくる。
■些細なことでもいらいらする。涙が吹き出てくる。理由もないのに不安になる。夜眠れない。
気が滅入って落ち込む。
■疲れやすく、根気が出ない。物忘れが多く、進んで何かをやりたいと思わない。
人と会いたくなく、家にこもりたがる。

さあ、いかがですか。当てはまる症状はありますか。更年期障害はこのような症状が、多岐にわたり複雑に絡み合ってでてきます。したがって、個人によってそれぞれ症状は異なり、そのため更年期不定愁訴と呼ばれていますが、よく観察すると共通点が見えてきます。更年期障害の症状は『のぼせ、ほてり』に代表される血管運動神経症状と、『不安、いらいら、うつ状態、』に代表される精神神経症状に大別され、それらが患者さんごとに、さまざまな強弱をもって現れてきます。したがって患者さん個人個人にあった治療が必要で、画一的な治療法ではよくなりません。
当院では女性ホルモン補充療法に代表される西洋医学的アプローチのほかに、漢方療法に代表される東洋医学的アプローチの両面からそれぞれの患者さんにあった治療法を提供しています。

更年期を乗り切る7つのポイント

1.更年期障害に早く気づくこと
2.更年期障害を自分だけで我慢しないこと
3.環境変化に柔軟に対応し、積極的に生きること
4.気軽に婦人科医に相談すること
5.ストレスをためずに完全主義者にならないこと
6.適度な運動をすること
7.バランスの取れた食事をすること

骨粗鬆症

骨粗鬆症

骨粗鬆症がホルモンの病気であることをご存知ですか。老化現象だと思っていませんでしたか。これを説明しましょう。骨粗鬆症とは加齢とともに骨量が減少し、骨がスカスカになって骨折を起こす病態です。高齢化社会が進むにつれて、寝たきり老人を増やす原因のひとつとなっています。

ところで、今の日本では女性の社会進出が進み、男女平等の世の中となっています。男性が子育てを主に担い、女性が家計を支える働き手となっていることも珍しくありません。でも生物学的にみると男女の役割分担がかなりはっきりしています。古代よりオスは狩りに出て獲物を捕り、メスは家で子育てに励むように作られています。そのためオスは男性ホルモン(アンドロゲン)の働きによって、筋肉と骨がメスよりも強固にできています。狩りに出て逆に獲物にやられては何にもならないからです。アンドロゲンも女性ホルモン(エストロゲン)も骨量を増やすように働きますが、男性では、特にこのアンドロゲンの働きによって、女性よりも骨が強固に、つまり骨量が多くなっています。しかも、女性は更年期に頼りのエストロゲンも急激に減少しますので、そのため、閉経後は特に急激な骨量の減少が起こります。したがって男女とも加齢とともに骨量が減少しますが、骨粗鬆症の患者さんの増加は、男性では80歳代に目立ってくるのに対して、女性では60歳代で目立ってくるのです。ナント、20年の差があるのです。女性は男性よりも平均寿命が長いです。60歳代で骨粗鬆症になって、腰痛で悩むようになってはその後の生活の質(QOL)が、損なわれてしまいます。

当院では、超音波骨密度測定装置を用いて骨量を測定し個別指導を行っています。
超音波骨密度測定装置はレントゲンと違って被曝(被ばく)の心配もなく、気軽に受けられます。また、骨粗鬆症の患者さんには女性ホルモン補充療法(HRT)が有効ですが、その他ビスフォスフォネート薬剤や選択的エストロゲン受容体モジュレーターなどの治療を提供して、患者さん一人一人に合った管理を提案しています。骨粗鬆症は重症になってからでは遅すぎます。治療も大切ですが、何よりも予防が大事です。更年期になったらぜひ自分の骨量を測定してみましょう。60歳代になって腰痛に悩まないために、70歳代になって寝たきり老人にならないために、早めの対策を立てましょう。

脂質異常症

脂質異常症

健康診断でコレステロールや中性脂肪値が高いといわれたことはありませんか。この病態を脂質異常症(高脂血症)といい、放置しておくと動脈硬化が進んで、脳梗塞や心筋梗塞を引き起こします。性成熟期の女性は、豊かな女性ホルモン(エストロゲン)の働きによってコレステロールや中性脂肪値の上昇が抑制され、動脈硬化から守られています。それが閉経期になるとエストロゲンの分泌が低下して、血中のコレステロールや中性脂肪値が上昇してきます。そのため更年期にはコレステロールが男性よりも高くなり、心筋梗塞などの動脈硬化性疾患が急激に増加してきます。更年期の女性が、健康診断でコレステロールの多い食事をあまり摂取していないのに、脂質異常症を指摘されるのはこのためなのです。しかし人間ドックなどで、更年期女性の脂質異常症が見つかっても、多くの場合このことはほとんど説明されていません。コレステロールの少ない食事を指導される程度で、患者さんのほうは『私は野菜ばかり食べて、お肉はあまり食べていないのに、どうしてこんなにコレステロールがあがったのかしら』と皆さん疑問に感じています。外来に来られる患者さんに、このことを説明しますと皆さんよく納得していただけます。更年期以後の動脈硬化を予防するには、このようなエストロゲンの作用と脂質異常症との正しい理解に立った管理が不可欠なのです。

当院では、動脈硬化を直接測定できる血圧脈波測定装置を用いるなどして、脂質異常症の管理を行っています。コレステロールが高かったら、中性脂肪値が高かったら、ぜひご相談ください。

メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)

メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)

肥満、脂質異常症、高血糖、高血圧といった動脈硬化の危険因子を複数併せ持った状態をメタボリックシンドロームといい、危険因子が重なると、ひとつひとつの程度が軽くても、動脈硬化が急速に進んで、心筋梗塞や、脳梗塞を引き起こします。過食や運動不足による内臓肥満の増加がその原因とされています。

尿失禁

尿失禁

尿失禁は女性に多い病気です。尿失禁には主に2つのタイプがあります。ひとつは、くしゃみや咳、急に立ち上がった時、重いものを持ち上げた時など、腹圧が上昇することで失禁する『腹圧性尿失禁』というタイプと、急に強い尿意を伴って、トイレに着くまで我慢できず失禁する『切迫性尿失禁』というタイプです。
両者の混合型もしばしば見うけられます。更年期の女性では腹圧性尿失禁が多く、手術療法もありますが、保存的治療法として漢方療法やホルモン補充療法が奏効する場合があります。

性行為障害

性行為障害

更年期以降の生活の質の向上には、性の問題を考慮すべきであるという考えが広がっています。
男性側のED(勃起障害)の治療は、バイアグラの登場によって大きく変わりました。また、EDには漢方療法も有効です。また女性側も更年期になり、女性ホルモンがなくなると、膣に潤いがなくなり、萎縮性膣炎を起こしやすくなります。萎縮性膣炎を起こすと性交時の疼痛のため性行為を苦痛に感じるようになります。ホルモン補充療法などで改善が可能です。恥ずかしがらずに相談してください。

糖尿病

糖尿病

糖尿病にはI型とII型がありますが、更年期に遭遇する糖尿病は、肥満、運動不足などの生活習慣が主な誘因となるII型糖尿病がほとんどです。更年期には女性ホルモンの不足により高脂血症が増加します。
高脂血症と糖尿病が合併すると動脈硬化が相乗的に悪化し、脳梗塞、心筋梗塞の誘因となります。糖尿病を防ぐには、まず食生活を見直し、十分な運動の習慣を生活の中に取り入れることが重要です。特に運動は糖尿病の予防とともに、高脂血症、骨粗鬆症の予防にも大変有効ですので、更年期以後の生活の質を保つために、毎日の運動習慣を身につけましょう。

高血圧

高血圧

更年期以後は高血圧が急増します。
血圧が140/90mmHg以上を高血圧と診断しますが、これは病院・診療所での値です。
最近家庭で簡単に血圧が測れるようになりました。自宅ではリラックスできますので、自宅の安静時の血圧では、135/80mmHg以上が高血圧になります。高血圧は、高脂血症、糖尿病と並んで、動脈硬化を悪化させる代表疾患です。
更年期では女性ホルモンの低下により、更年期障害が生じ、それがしばしば交感神経の緊張状態を引き起こします。この交感神経の緊張は、更年期の高血圧の原因となります。更年期障害の管理は、高血圧の管理にもつながるのです。

閉寒性動脈硬化症

閉寒性動脈硬化症

動脈硬化によって下肢の動脈につまりが生じ、血行障害が引き起こされる病気です。
しびれ感、寒気から、重症になると下肢の潰瘍、壊疽にまでに至ります。歩行中に脚の痛みを感じて歩けなくなり、歩くのを止めて、脚の筋肉を休ませると痛みが少なくなり、また歩くと同じ症状が出る『間歇性歩行』という特徴的な症状があります。当院にある血圧脈波測定装置は、両下肢の血管のつまり具合を詳しく測定できます。下肢にしびれや寒気を感じる場合、ぜひ血圧脈波の測定を受けてみてください。

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